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- 患者さんのリハビリ拒否にイライラしてしまう
- 「説明したのに、なぜ動いてくれないんだろう」と思う
- 表面的な共感しかできず、信頼関係が築けない
理学療法士として働き始めた頃の私も、まさにそうでした。
医学的知識も、リハビリ技術も十分にある。でも、なぜか患者さんとの信頼関係が築けない。
それは、「共感力」という目に見えない力が足りていなかったからです。
先に結論を伝えると、共感力は「優しさ」ではなく、患者の人生を想像し続ける力。読書は、その想像力を鍛える最も安全で深い訓練です。
読書を始めて5年。私の臨床は大きく変わりました。
- 他のスタッフが手を焼く患者さんが、私にだけは心を開いてくれる
- 「あなたのリハビリなら受けたい」とリハビリ回数を増やしてくれる
その変化をもたらしたのは、新しい技術でも話術でもありません。
読書による「想像力」の獲得でした。
明日から使える、本で鍛える共感力についてお伝えします。
結論:共感力は「優しさ」ではなく、想像し続ける力である

共感力は「優しさ」ではない。患者の人生を想像し続ける、後天的に鍛えられる力だ。
医療現場で「あの人は優しい」「共感力がある」と言われる人も、実は生まれつきそうだったわけではありません。
意識的に、訓練しているのです。
共感の本質は「他者の靴を履く」想像力
作家のブレイディみかこ氏は、著書『他者の靴を履く』の中で、共感を超えた「想像力」の重要性を説いています。
それは単に「かわいそう」と思うことではなく、**「自分とは違う人生を歩んできた人の立場に立って、その世界を想像し続けること」**です。
患者さんと同じ立場になることは、私たちには不可能です。
- 病気を経験していない。
- 同じ痛みを感じたことがない。
- 同じ人生を歩んでいない。
だからこそ、ひたすらに「想像」し続けるしかないのです。
なぜ読書なのか?
では、どうやってその想像力を養うのか。
答えは、読書です。
読書は、自分が体験できない人生を、安全に追体験できる唯一の方法です。
- 失語症になった人の絶望
- 長期リハビリを続ける人の孤独
- 認知症の人が感じている世界
これらを、実際に経験せずとも、本を通じて「1ミリだけ近づく」ことができる。
理解まではいかない。でも、想像することはできる。
そして、その想像力こそが、患者さんとの信頼関係を築く土台になります。
患者さんの気持ち分かる!とか言う人いるけど、同じ病気したことがない人が分かるはずないのよね。
かつての私は、患者さんを「わがまま」だと思っていた

表面的な共感しかできなかった新人時代
理学療法士になりたての頃、私の患者対応は浅いものでした。
- 親しみやすさを勘違いして、タメ口で話す
- リハビリメニューの説明だけで終わる
- 励ます言葉も、型通り
「頑張りましょう」「良くなりますよ」──そんな言葉を口にしながら、本当の意味で相手の人生に関心を持っていなかったのです。
今思うとほんと恥ずかしい。。
【実体験】リハビリ拒否にイライラしていた過去
ある利用者さんは、リハビリに対して強い不満を持っていました。
「なかなか良くならない」
「家から出られないのは、医療やリハビリのせいだ」
私はその言葉を聞くたびに、心の中でこう思っていました。
- 「こちらは一生懸命やっているのに」
- 「自分の要望ばかり言って、こっちの話を聞いてくれない」
- 「そもそも、何もしないで良くなるわけないじゃないか」
表面上は笑顔で対応しても、本心では「わがまま」だと感じていたんです。
当然、その気持ちは相手に伝わります。信頼関係なんて、築けるはずがありませんでした。
今思うと新人あるあるかも。私も結構尖ってた笑
「説明したのに動かない」という医療者側の論理
当時の私は、自分が正しいと信じていました。
- リハビリの方法を丁寧に説明している
- 科学的根拠に基づいた提案をしている
- 患者さんのためを思って助言している
でも、それは相手の人生や背景を全く見ていなかった証拠でした。
「なぜこの人は動けないのか」
「なぜこの人はリハビリに不信感を持っているのか」
その理由を理解しようともせず、ただ**「教科書的な正しさ」を押し付けていた**だけだったのです。
「他者の靴を履く」ために読書が必要だった理由

患者の「内側の声」を知った2冊の本
転機は、ある2冊の本との出会いでした。
これらの本には、患者さん自身が書いた**「PTには言えない本音」**が綴られていました。
ページをめくりながら、私は何度も息を呑みました。
「リハビリ中、こんなことを思っていたのか」
「私たちには見えていない、こんな孤独や葛藤があったのか」
特に『リハビリの夜』を読み終えた後は、しばらく患者さんの顔を見るのが怖くなりました。自分がどれだけ無神経だったか、思い知らされたからです。
私の目の前にいる患者さんも、口には出さないだけで、同じことを思っているのかもしれない。
そう気づいた時、**「この人は自分とは違う人生を歩んできた」**という当たり前のことが、ようやく腹に落ちたんです。
追体験の力──「理解」はできなくても「近づく」ことはできる
読書を続ける中で、私はさまざまな「追体験」をしました。
- 失語症の本を読んで、「言葉が理解できなくなる絶望」を知った
- 闘病記を読んで、患者の孤独感に少しだけ近づけた
- リハビリ体験者の手記を読んで、「本気でない医療者」は見透かされることを学んだ
もちろん、理解までは行けません。
私は失語症を経験していないし、長期入院もしたことがない。だから、患者さんの気持ちを100%理解することは不可能です。
でも、思考を止めずにいることはできる。
「もし自分がこの立場だったら、どう感じるだろう」
「この人は、どんな葛藤を抱えているんだろう」
そうやって、立ち止まって考え続けることはできるのです。
ブレイディみかこ氏の「他者の靴を履く」という概念
私の共感力に対する考え方を決定的に変えたのが、ブレイディみかこ氏の著書でした。
- 『他者の靴を履く』
- 『僕はイエローでホワイトでちょっとブルー』
これらの本で語られているのは、共感を超えた**「想像力」としての知性**です。
ブレイディ氏は、こう語っています。
「他者の靴を履く」とは、相手と同じ立場に立つことではない。相手の世界がどう見えているかを、必死に想像し続けることだ。
患者さんと同じ土俵には立てない。同じ痛みは感じられない。
だからこそ、ひたすらに考え続ける。
それが、医療者に必要な「共感力」の本質だと、私は学んだのです。
読書で変わった「臨床の風景」と私の行動

読書を通じて想像力が養われた結果、私の臨床は具体的にどう変わったのか。
以下の表に、Before/Afterをまとめました。
| 項目 | 読書前(以前の私) | 読書後(現在の私) |
|---|---|---|
| 患者への視点 | 「わがままな人」「非協力的な人」 | 「言葉にできない葛藤を抱えた人」 |
| 言葉遣い | 親しみやすさを狙った「タメ口」 | 敬意を込めた徹底的な「敬語」 |
| 会話のスタイル | 正論で「説得」する | 質問で「背景を深掘り」する |
| リハビリの目的 | 身体機能の改善(歩かせる) | 人生の再建(外に出る理由を創る) |
【変化1】「親しみやすさ」をやめ、徹底した「敬語」へ
読書を通じて学んだことの一つは、**「相手の人生への敬意」**でした。
医療現場では、「親しみやすさ」を理由に、患者さんにタメ口で話す職員も少なくありません。私もかつてはそうでした。
でも、本を読み、様々な人生の重みを知るにつれて、こう思うようになりました。
「この人は、私が生まれる前から人生を歩んできた人だ」
だから、私は意識的に**「敬語」**に変えました。
敬語にしたから信頼されたわけではありません。
敬語は、「相手の人生に敬意を払う姿勢」を自分に思い出させるためのスイッチみたいなもんです。
医療現場でのタメ口は、無意識のうちに「医療者=上、患者=下」という権力勾配を作ってしまいます。
敬語を使うことは、相手を一人の独立した人格として尊重する「礼儀」であり、同時に感情的にのめり込みすぎないための**「プロとしての適切な距離感」**でもあるのです。
【変化2】自分の話を抑え、「聞き役」に徹する
人間は、自分の話をしたくなる生き物です。
だからこそ、私は自分の話を抑え、質問することに集中しました。
- 「それはどんなお気持ちでしたか?」
- 「ご自宅ではどんな風に過ごされていますか?」
- 「これからやってみたいことはありますか?」
相手が「この人と話すのは楽しい」と思えるまで、ひたすら聞く。そして、その会話の中から、リハビリのヒントを見つける。
読書で学んだ「相手の世界を理解しようとする姿勢」が、自然と質問の質を変えていったのです。
【変化3】「歩かせる」から「外に出る理由を創る」へ
理学療法士の仕事は、身体機能や能力を改善し、社会復帰の手助けをすることです。
でも、読書を通じて気づいたのは、身体機能を高めるだけでは足りないということでした。
改善した機能を使って、患者さんが**「どこへ行きたいか」**を想像できなければ、そのリハビリはただの作業になってしまう。
身体機能を高めるだけでなく、心をリハビリする。
それが、読書で養った想像力が臨床に活きる瞬間でした。
【実体験】拒否が強かった患者さんが、私にだけ心を開いた話
ある患者さんは、担当のPTやOTに対してリハビリ拒否が続いていました。
数年間、社会に出る一歩を踏み出せないまま過ごし、医療や介護に強い不信感を持っていました。
ある日、私が代診でその方を担当した時のことです。
驚くことに、全く拒否なくリハビリを受けてくれたんです。
その時、私は特別なテクニックを使ったわけではありません。
ただ、ひたすらに「この人は何を感じているのだろう」と想像しながら、話を聞き続けました。
以前の私なら、「なぜ動いてくれないのか」とイライラしていたであろう場面でも、今の私は違いました。
- 「この人が動けないのには、理由がある」
- 「その理由を、まず知りたい」
そう思いながら、質問を重ねました。
その後、正式に担当が変わり、その方は他のサービスを調整してまで、私のリハビリの回数を増やしてくれました。
「あなたのリハビリなら受けたい」
その言葉をもらった時、読書で学んだ「想像力」が、確かに臨床を変えたのだと実感しました。
医療者こそ読むべき「共感力を磨く4冊」

ここからは、私の共感力を決定的に変えた本を紹介します。
医学書では学べない「人間力」を養いたい方に、ぜひ読んでいただきたい4冊です。
1. 『リハビリの夜』(熊谷晋一郎 著)
医師でありながら、自身もリハビリを受けた当事者の手記。
この本には、PTには言えない患者の本音が赤裸々に綴られています。
- 「リハビリを受けていて、こんな気持ちなのか」
- 「私たちは、こんな風に見られているのか」
読み終えた後、しばらく患者さんの顔を見るのが怖くなるほど、衝撃的でした。
2. 『リハビリの結果と責任』
患者自らの言葉が綴られた、貴重な一冊。
リハビリの「成功」や「失敗」を、当事者の視点から語った本です。
医療者側の「良かれと思って」が、患者さんにはどう映っているのか。その温度差を知ることができます。
3. 『他者の靴を履く』(ブレイディみかこ 著)
共感を超えた「想像力(エンパシー)」の本質を学ぶ一冊。
医療者に必要な「知性としての共感」が、この本には詰まっています。
「共感」とは感情ではなく、**「想像し続ける力」**だと教えてくれます。
4. 『青い鳥』(重松清 著)
心を通わせるための「寄り添い方」を、物語から学ぶ。
小説だからこそ伝わる、人間の温かさがあります。
著者自身が吃音のため悩みや苦しみがあり作品に反映されてます。
そのため言葉の重みが違う。
医学書では学べない「人間力」を、物語を通じて体感できる一冊です。
(番外編)『僕はイエローでホワイトでちょっとブルー』(ブレイディみかこ 著)
多様性の時代に必要な「他者理解」のヒント。
医療現場でも、様々なバックグラウンドを持つ患者さんと出会います。その時に必要な「想像力」を養える本です。
一時期話題になった本です。
現在は文庫版も販売されているため手に取りやすい価格です。
リハビリを勉強するだけでは、リハビリは完成しない
医学書だけでは学べない「人間力」
例えば、認知症の方への対応は、教科書的な正しさでは解決しません。
- 「薬をちゃんと飲んでください」
- 「リハビリをやらないと良くなりませんよ」
こんな医療者側の論理を言っても、相手の心は動かない。
まずは相手をわかってあげること。話を聞くこと。
そして何より、**「その人の人生観」**を大事にすることが重要です。
技術だけでなく、「その人がどんな人生を歩んできたのか」を想像する力。それが、医学書だけでは学べない「人間力」です。
みんな、医療者も介護者も、それをわかってはいます。
でも、時間に追われると対応できなくなる。
だからこそ、日頃から読書で「想像する筋肉」を鍛えておく必要があるのです。
医療という仕事は、正しさだけでは前に進まない
医療は、正しさだけでは前に進まない仕事です。
- 技術は大切です。
- 知識も必要です。
でも、人の人生に触れる以上、答えが出ない問いを抱え続ける覚悟が必要になる。
- 「この人は、なぜこんなにも苦しんでいるのか」
- 「私は、この人の人生にどう関われるのか」
そうした問いに、医学書は答えてくれません。
だからこそ、読書が必要なのです。
後輩へのメッセージ──若い頃の自分に伝えたいこと

もし、医学書ばかり読んでいる後輩がいたら、私はこう伝えたい。
「リハビリの知識だけ勉強しても、使えない時が多いよ。
人を相手にする仕事だから、患者さんが書いた手記とか、小説を読んでみて。
少しずつ、心を通わせられるようになる。
患者さんとある程度心を通わせて、はじめてリハビリができる。
そのためには、本でいろんな人の経験を追体験しなさい。」
共感力は、言うほど簡単じゃない。むしろ、共感なんてできやしない。
でも、ひたすらに想像することはできる。
そして想像力を養うために、読書がある。
読書する前とした後では、共感力の深度が全く違う。少なくても私はそうでした。
だから、本を読みなさい。
まとめ:一冊の本が、あなたの「患者を見る目」を変える

共感力とは、相手になりきることではありません。
相手の人生を想像し続ける力であり、読書はその想像力を鍛える、最も安全で深い訓練です。
一冊の本が、あなたの「患者を見る目」を劇的に変えます。
もし迷ったら、**『リハビリの夜』**から読んでみてください。
きっと、明日の患者さんの見え方が少し変わります。
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※免責事項
本記事は、筆者個人の臨床経験に基づく考え方を共有するものであり、特定の治療法や効果を保証するものではありません。
患者さんへの対応方法は、個々の状況や専門的判断によって異なります。あくまで一つの視点として参考にしていただければ幸いです。