「あの職種は、分かっていない」と思った瞬間はありませんか?
- リハビリ科と病棟。
- 医師とコメディカル。
- 先輩と後輩
医療現場で働いていれば、一度は「なぜ分かってくれないんだ」とイライラした経験があるはずです。
「離床させてほしい」と頼めば、「人が足りない。自分で起こせば?」と返される。「こっちも忙しい」と言えば、「こっちだって同じだ」と返される。
そして会議では「連携が大事」「協力しましょう」と言いながら、翌日にはまた同じ対立が起こる。
私は30代中盤まで、この不毛な対立の渦中にいたんですよね。
「看護師は分かっていない」「病棟は非協力的だ」と、心の中で何度も繰り返していました。
でも、ある本を読んで気づいたんです。
対立の原因は、相手ではなく、自分の中にある『認知バイアス』だった、と。
この記事の結論:認知バイアスに気づけば、対立に振り回されなくなる
先に結論を言います。
医療現場の対立は、なくなりません。でも、あなたが「振り回されなくなる」ことはできます。
それが、認知バイアスに気づくということです。
この仕組みに気づくだけで、対立の質が変わります。
「対立がゼロになる」わけではありません。でも、感情的に消耗することは確実に減ります。
そして、建設的な話し合いができるようになります。
この記事では、40代目前の私が『ファスト&スロー』という本を読んで気づいた「認知バイアスの正体」と、それを医療現場でどう実践したかを、正直に書きます。
これはPTだけの話ではありません。
医療現場で"あの職種は分かっていない"と思った瞬間がある人、全員の話になります。
【ビフォー】40代目前の私は、対立の渦中にいた

リハビリ科 vs 病棟の「あるある対立」
私が働く病院では、リハビリ科と病棟の間に、いつも小さな対立がありました。
どちらも間違ったことは言っていません。でも、お互いに「相手が非協力的だ」と感じている。
リハビリ科は「離床させないと患者は良くならない」と思っているし、病棟は「こっちだって人手不足で限界だ」と思っている。
そして、会議では「連携しましょう」と言いながら、何年も同じ対立を繰り返す。
私は当時、こう思っていました。
「看護師は分かっていない。患者が病棟にいる時間は、病棟の仕事だろう」
若手時代の失敗:看護師長にカッとなって言い返した

もっと若い頃、さらにひどい対立もありました。
ある日、看護師長に言われたんです。
「よくそんなに年取った患者さんをリハビリさせるわね。私なら寝せておくけど」
カッとなりました。
「寝せておいたら、もっと悪くなるに決まってるじゃないですか!」と、声を荒げて言い返しました。
今思えば、私も感情的すぎました。でも当時は「自分は正しい」「相手は間違っている」としか思えなかったんですよね。
この対立には、もう一つの感情が隠れていました。
- 無力感
- 評価されない感覚
- 専門職としてのプライドを傷つけられた感覚
「私たちがどれだけ患者のために頑張っているか、誰も分かってくれない」
そんな思いが、怒りとして噴き出していたんだと思います。
嫌いな同僚・上司へのイライラ
対立は、他職種だけではありませんでした。
同じリハビリ科の中にも、嫌いな同僚や上司がいました。
第一印象で「この人、手を抜く人だな」と判断すると、その後ずっとそのラベルが外れない。一度「嫌い」と思うと、何をしても嫌いなまま。
そして、他部署を批判する同僚や上司の愚痴を聞くたびに、私もイライラしていました。
「協力や連携が大事だと口では言うのに、なぜ何年も同じことを繰り返しているんだよ?」
そんな疑問を抱えながら、私は40代目前を迎えました。
【行動】『ファスト&スロー』で学んだ「システム1とシステム2」
なぜこの本を手に取ったのか
40代になる目前、私はある疑問を抱えていました。
- 「なぜ、人は第一印象で判断すると、その考えを改めるのがこんなに大変なのか?」
- 「なぜ、見た目や1つの行動だけで『この人は〇〇な人だ』と決めつけてしまうのか?」
嫌いな同僚や上司がいて、ストレスでした。でも、相手を変えることはできない。
だから、「考え方」で何とか改善できないかと思ったんです。
そこで手に取ったのが、ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』でした。
この本は、人間の思考が2つのシステムで動いていることを解説しています。
システム1とシステム2とは?

| 項目 | システム1(速い思考) | システム2(遅い思考) |
|---|---|---|
| 特徴 | 直感的、感情的、無意識的 | 論理的、分析的、意識的 |
| 速さ | 瞬時に判断 | じっくり考える |
| エネルギー | ほとんど使わない | 疲れる |
| 医療現場での例 | 「この人、感じ悪い」「看護師は分かってない」 | 「なぜそう思ったのか?」「相手の立場では?」 |
人間は、ほとんどの時間をシステム1で過ごしています。
なぜなら、システム2は疲れるから。だから、脳は「楽な方」を選びます。
でも、システム1は「誤作動」を起こすんですよね。
- 見た目だけで判断する。
- 第一印象で決めつける。
- 自分の都合の良いように解釈する。
これが、認知バイアスの正体です。
医療現場でシステム1が暴走する典型例3つ
私が気づいた、医療現場で「システム1が暴走する典型例」を3つ挙げます。
①確証バイアス:「やっぱりあの人は〇〇だ」
一度「この人は手を抜く」と思うと、その証拠ばかりを集めてしまう。
逆に、頑張っている場面は「たまたま」と無視する。
②内集団バイアス:「自分たちは正しい」
自分が所属する集団(リハビリ科、病棟など)を無意識に贔屓する。
「自分たちは正しい」「相手は間違っている」と感じてしまう。
過去の私はこのパターンが多かったように思います。
③利用可能性ヒューリスティック:「最近の出来事=全体」
最近起きた1つの出来事で、相手を評価してしまう。
「先週、協力してくれなかったから、あの病棟は非協力的だ」など。
これらはすべて、システム1の「自動反応」です。
無意識で思い込んじゃうんだから恐ろしいです。
【医療現場で対立が起きる原因まとめ】
認知バイアスの観点から整理すると、医療現場で対立が起きやすい理由は以下の通りです。
- 忙しすぎる環境:システム2を起動する余裕がない
- 役割が違う:「役割上の正しさ」が衝突する
- 認知バイアス:無意識の決めつけが対立を生む
- 評価制度の問題:専門職としての努力が評価されにくい
特に、忙しい現場では「考える余裕」がないため、システム1の暴走が起きやすくなります。
私の実践:システム1に気づき、システム2を起動する
『ファスト&スロー』を読んだ後、私は実践を始めました。
step
1システム1に気づく
「なぜ、私はこの人を『手を抜く人』とラベリングしたのか?」
「見た目?1つの行動?それだけで決めつけていないか?」
step
2システム2を起動する
「なぜそう考えたのか?」
「他の一面もあるのに、なぜ決めつけてしまったのか?」
step
3客観視する方法を持つ
自分だけでは客観視が難しいとき、私はAIに自分の気持ちを分析してもらうことがあります。
「今日、〇〇さんにイライラした。なぜだろう?」と質問すると、心理学的な視点で回答してくれる
これは自分を客観視する方法の一例です。
AIを使わなくても、信頼できる同僚に話を聞いてもらったり、日記を書いたりするのも有効です。
大事なのは、自分の感情を「外から見る」仕組みを持つことです。
忙しい現場でもできる「3秒の介入」
「そんな悠長に考えている時間はない」
そう思うかもしれません。
でも、システム2を起動するのに必要なのは、たった3秒です。
イラっとした瞬間に、心の中でこう問いかけてみてください。
- 「今、私はどの立場で怒っている?」
- 「相手の立場なら、どう見える?」
これだけで、システム1の暴走にブレーキがかかります。
【転機】「自分たちが正しい」というバイアスに気づいた瞬間

一歩引いて見たら、「どちらも間違っていない」ことに気づいた
ある日、私は気づきました。
自分が「リハビリ科の一員」という集団に属していることで、無意識に贔屓していた、と。
「リハビリ科は正しい」「病棟は非協力的だ」
でも、一歩引いて見たら、どうでしょう?
- リハビリ科の立場:離床させないと患者は良くならない。これは正しい。
- 病棟の立場:人手不足でギリギリ。これも正しい。
どちらも間違っていないんですよね。
でも、「役割上の正しさ」は衝突してしまいます。
- リハビリ科には「患者を良くする」という役割
- 病棟には「限られた人員で安全を守る」という役割
正しさが衝突するとき、人は必ずバイアスに逃げます。
「自分たちは正しい」→「相手は間違っている」→「対立」
この流れは、双方に当てはまるんです。
これもシステム1の反応だから、仕方ない
そして、もう一つ気づきました。
この「自分たちが正しい」と感じるのも、システム1の反応だ、と。
集団に属すると、無意識に「内集団バイアス」が働く。これは、進化の過程で身につけた「生存戦略」です。
原始時代、自分の集団を守ることは生存に直結していました。だから、脳は「自分たちは正しい」「外は敵だ」と判断するように進化したんですよね。
でも、現代社会では、この機能が「誤作動」を起こします。
同じ病院で働く仲間なのに、職種が違うだけで「敵」に見えてしまう。
これは、仕方ないんです。システム1は、意識では止められないからです。
でも、気づくことはできます。
【アフター】対立に振り回されなくなった。でも新たな課題も…
変化:感情的な対立がなくなった
認知バイアスに気づいてから、私は変わりました。
感情的な対立が、ほぼなくなりました。
病棟スタッフと普通に会話できるようになったし、上司や同僚にイライラすることも、たまにある程度になりました。
かなり、穏やかになりました。
なぜなら、イライラしたときに「今、私はシステム1で反応しているな」と気づけるようになったから。
気づけば、振り回されなくなります。
正直な告白:AIに「見下している感が出ている」と指摘された
でも、新たな課題も見えてきました。
ある日、AIに指摘されたんです。
「一歩引いているからこそ、見下している感が出ていますね」
ハッとしました。
確かに、心の奥に「自分は知識があって感情をコントロールできている。みんなはできていない」という優越感がありました。
これも、システム1の反応です。
「自分は正しい」と思いたい脳の働き。
システム1は、怖い(笑)。
完全に排除することはできません。でも、気づくことはできます。
そして、気づいたら、また修正すればいい。
【理学療法士的考察】なぜ認知バイアスは生まれるのか?
筋肉と同じで、「使わないと衰える」
理学療法士として、私はこう考えます。
思考も、筋肉と同じです。
筋肉は、使わなければ衰えます(廃用性萎縮)。そして、適切な負荷をかければ、成長します。
思考も同じです。
システム2(熟考)を使わなければ、システム1(直感)に支配されます。そして、適切な「思考の負荷」をかければ、思考力は成長します。
「環境が悪いと、訓練できない」
もう一つ、理学療法士として気づいたことがあります。
環境が悪いと、訓練できない。
リハビリでも、患者が「訓練しやすい環境」を整えることが重要です。
思考も同じ。
- 忙しすぎる職場、人手不足、評価されない環境。
- こういう環境では、システム2を起動する余裕がありません。
だからこそ、医療現場では「システム1の暴走」が起きやすい。でも、それを知っているだけで、少し冷静になれます。
「今、この職場は『思考の訓練』ができる環境じゃないな」
「だから、みんなシステム1で反応してるんだな」
そう思えば、相手を責める気持ちも減ります。
廃用は、思考にも起きる
患者が寝たきりになれば、筋力が落ちます。これが「廃用症候群」です。
思考も、使わなければ廃用します。
- 「考えるのが面倒だから、直感で判断する」
- 「相手の立場を想像するのが面倒だから、決めつける」
これを繰り返していると、思考の筋力が落ちます。
逆に、毎日少しでも「なぜ?」と問いかければ、思考の筋力は維持できます。
医療現場の対立で消耗しないための具体的な対処法3つ
ここまで読んで、「で、結局どうすればいいの?」と思った方へ。
認知バイアスに気づいた私が、実際に使っている対処法を3つ紹介します。
対処法①:3秒の問いかけ
イラっとした瞬間に、心の中でこう問いかける。
「今、私はどの職種の立場で怒っている?」
たった3秒。これだけで、システム2が起動します。
対処法②:立場を分けて考える
対立が起きたとき、こう考える。
「自分がリハビリ科にも病棟にも属していない、第三者だったら?」
一歩引いて見ると、「どちらも間違っていない」ことに気づけます。
対処法③:ラベリングに気づく
「この人は〇〇な人だ」と決めつけている自分に気づく。
「本当に?他の一面は?」
と問いかけるだけで、ラベルが外れます。
これらは、すべて「気づく」ための方法です。
認知バイアスは完全には排除できません。でも、気づけば、振り回されなくなります。
よくある質問(FAQ)
認知バイアスは完全になくせますか?
いいえ、完全にはなくせません。
認知バイアスは、人間の脳に組み込まれた「生存戦略」です。完全に排除することはできません。
でも、気づくことはできます。そして、気づけば、対処できます。
忙しくて考える余裕がありません
たった3秒でいいんです。
システム2を起動するのに、長い時間は必要ありません。イラっとした瞬間に、「今、私はどの立場で怒っている?」と問いかけるだけ。
たった3秒の介入で、感情の暴走は止まります。
相手が明らかに悪い場合はどうすればいいですか?
「相手が悪い」と思った瞬間が、バイアスの始まりです。
本当に相手が悪い場合もあります。
でも、「明らかに」と思った瞬間、あなたの中で確証バイアスが働いている可能性があります。「本当に?他の視点は?」と一度問いかけてみてください。
それでも「やっぱり相手が悪い」と思えるなら、冷静に対処すればいいだけです。
本を読む時間がありません
要約サイトや動画でも十分学べます。
『ファスト&スロー』は分厚い本です。
読む時間がないなら、要約サイトやYouTubeの解説動画でも十分です。大事なのは、「システム1とシステム2がある」という知識を得ること。それだけで、見える世界が変わります。
こんな人には向いている/今は読むべきでない人
向いている人
- 「相手が悪い」と思う前に、自分を振り返りたい人
対立の原因を外に求めず、内に求められる人 - イライラを減らしたい人
感情的に消耗するのに疲れた人 - 冷静な大人になりたい人
正直に言えば、ちょっとかっこいいから(笑)
今は読むべきでない人
- 「相手を変えたい」と思っている人
認知バイアスを学んでも、相手は変わりません。変わるのは、あなたです。 - 本を読む時間がない人
でも、要約サイトでも学べます。完璧を求めなくて大丈夫です。 - すでに穏やかな人
あなたには必要ない記事です(笑)
まとめ:対立は「成長のチャンス」

もし、過去の私に声をかけられるなら、こう言います。
「確かにイライラするときはある。でもそれは、君の知識の足りなさからくるものだ。まだ感情をコントロールするすべを知らないからだよ。
相手が悪いとか、相手がこうだからとか、原因を相手に求めているうちはずっと変わらない。
本を読んで、自分がそんなときどう対処するのかを学ばなくてはならない。
対立とイライラがあるときは、成長のチャンスかもよ!」
認知バイアスは、完全に排除できません。でも、気づくことはできます。
そして、気づけば、振り回されなくなります。
イライラしても、建設的な話し合いはできません。でも、冷静になれば、対立の質が変わります。
知的資本は、人間関係の質を変えます。
最後に、超小さな行動を1つだけ
次にイラっとしたら、こう問いかけてみてください。
「今、私はどの職種の立場で怒っている?」
たった1行。たった3秒。
これだけで、システム2が起動します。
読書で変わったのは、人間関係だけじゃない
ちなみに、読書で変わったのは人間関係だけではありません。
年収も、キャリアも、メンタルも、すべて変わりました。
それらをまとめた記事がこちらです。
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