40代男性が静かな時間に自分を見つめ直している様子。共感力を鍛えるために内省する理学療法士のイメージ。

「知的投資」の技術

医療者こそ読書を。患者の「人生」に寄り添う共感力を鍛える方法

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  • 患者さんのリハビリ拒否にイライラしてしまう
  • 「説明したのに、なぜ動いてくれないんだろう」と思う
  • 表面的な共感しかできず、信頼関係が築けない


理学療法士として働き始めた頃の私も、まさにそうでした。

医学的知識も、リハビリ技術も十分にある。でも、なぜか患者さんとの信頼関係が築けない。

それは、「共感力」という目に見えない力が足りていなかったからです。

先に結論を伝えると、共感力は「優しさ」ではなく、患者の人生を想像し続ける力。読書は、その想像力を鍛える最も安全で深い訓練です。

読書を始めて5年。私の臨床は大きく変わりました。

  • 他のスタッフが手を焼く患者さんが、私にだけは心を開いてくれる
  • 「あなたのリハビリなら受けたい」とリハビリ回数を増やしてくれる


その変化をもたらしたのは、新しい技術でも話術でもありません。

読書による「想像力」の獲得でした。

この記事で分かること

  • 読書で共感力を高める方法(追体験の力)
  • 私の臨床がどう変わったか(実体験)
  • 医療者が読むべき「共感力を磨く本」4冊


明日から使える、本で鍛える共感力についてお伝えします。


結論:共感力は「優しさ」ではなく、想像し続ける力である

相手の話に耳を傾け、気持ちを受け取るコミュニケーション。共感力を持って患者と向き合う医療者のイメージ。
共感とは「同意」ではなく「理解しようとする姿勢」。


共感力は「優しさ」ではない。患者の人生を想像し続ける、後天的に鍛えられる力だ。

医療現場で「あの人は優しい」「共感力がある」と言われる人も、実は生まれつきそうだったわけではありません。

意識的に、訓練しているのです。

共感の本質は「他者の靴を履く」想像力

作家のブレイディみかこ氏は、著書『他者の靴を履く』の中で、共感を超えた「想像力」の重要性を説いています。

それは単に「かわいそう」と思うことではなく、**「自分とは違う人生を歩んできた人の立場に立って、その世界を想像し続けること」**です。

患者さんと同じ立場になることは、私たちには不可能です。

  • 病気を経験していない。
  • 同じ痛みを感じたことがない。
  • 同じ人生を歩んでいない。


だからこそ、ひたすらに「想像」し続けるしかないのです。

なぜ読書なのか?

では、どうやってその想像力を養うのか。

答えは、読書です。

読書は、自分が体験できない人生を、安全に追体験できる唯一の方法です。

  • 失語症になった人の絶望
  • 長期リハビリを続ける人の孤独
  • 認知症の人が感じている世界


これらを、実際に経験せずとも、本を通じて「1ミリだけ近づく」ことができる。

理解まではいかない。でも、想像することはできる。

そして、その想像力こそが、患者さんとの信頼関係を築く土台になります。

青葉
青葉

患者さんの気持ち分かる!とか言う人いるけど、同じ病気したことがない人が分かるはずないのよね。


かつての私は、患者さんを「わがまま」だと思っていた

新人の頃の理学療法士。患者さんはわがままだと感じていた。対応も浅く表面的な関わり

表面的な共感しかできなかった新人時代

理学療法士になりたての頃、私の患者対応は浅いものでした。

  • 親しみやすさを勘違いして、タメ口で話す
  • リハビリメニューの説明だけで終わる
  • 励ます言葉も、型通り


「頑張りましょう」「良くなりますよ」──そんな言葉を口にしながら、本当の意味で相手の人生に関心を持っていなかったのです。

青葉
青葉

今思うとほんと恥ずかしい。。


【実体験】リハビリ拒否にイライラしていた過去

ある利用者さんは、リハビリに対して強い不満を持っていました。

「なかなか良くならない」

「家から出られないのは、医療やリハビリのせいだ」

私はその言葉を聞くたびに、心の中でこう思っていました。

  • 「こちらは一生懸命やっているのに」
  • 「自分の要望ばかり言って、こっちの話を聞いてくれない」
  • 「そもそも、何もしないで良くなるわけないじゃないか」


表面上は笑顔で対応しても、本心では「わがまま」だと感じていたんです。

当然、その気持ちは相手に伝わります。信頼関係なんて、築けるはずがありませんでした。

青葉
青葉

今思うと新人あるあるかも。私も結構尖ってた笑


「説明したのに動かない」という医療者側の論理

当時の私は、自分が正しいと信じていました。

  • リハビリの方法を丁寧に説明している
  • 科学的根拠に基づいた提案をしている
  • 患者さんのためを思って助言している


でも、それは相手の人生や背景を全く見ていなかった証拠でした。

「なぜこの人は動けないのか」

「なぜこの人はリハビリに不信感を持っているのか」

その理由を理解しようともせず、ただ**「教科書的な正しさ」を押し付けていた**だけだったのです。


「他者の靴を履く」ために読書が必要だった理由

静かな時間の中で考えを深める男性の横顔。読書を通じて他者の人生を想像し共感力を養うイメージ。
読書は、他人の人生を疑似体験する時間。

患者の「内側の声」を知った2冊の本

転機は、ある2冊の本との出会いでした。

ポイント

  • 『リハビリの夜』(熊谷晋一郎 著)
  • 『リハビリテーションの結果と責任』


これらの本には、患者さん自身が書いた**「PTには言えない本音」**が綴られていました。

ページをめくりながら、私は何度も息を呑みました。

「リハビリ中、こんなことを思っていたのか」

「私たちには見えていない、こんな孤独や葛藤があったのか」

青葉
青葉

特に『リハビリの夜』を読み終えた後は、しばらく患者さんの顔を見るのが怖くなりました。自分がどれだけ無神経だったか、思い知らされたからです。


私の目の前にいる患者さんも、口には出さないだけで、同じことを思っているのかもしれない。

そう気づいた時、**「この人は自分とは違う人生を歩んできた」**という当たり前のことが、ようやく腹に落ちたんです。

追体験の力──「理解」はできなくても「近づく」ことはできる

読書を続ける中で、私はさまざまな「追体験」をしました。

  • 失語症の本を読んで、「言葉が理解できなくなる絶望」を知った
  • 闘病記を読んで、患者の孤独感に少しだけ近づけた
  • リハビリ体験者の手記を読んで、「本気でない医療者」は見透かされることを学んだ


もちろん、理解までは行けません。

青葉
青葉

私は失語症を経験していないし、長期入院もしたことがない。だから、患者さんの気持ちを100%理解することは不可能です。


でも、思考を止めずにいることはできる

「もし自分がこの立場だったら、どう感じるだろう」

「この人は、どんな葛藤を抱えているんだろう」

そうやって、立ち止まって考え続けることはできるのです。

ブレイディみかこ氏の「他者の靴を履く」という概念

私の共感力に対する考え方を決定的に変えたのが、ブレイディみかこ氏の著書でした。

  • 『他者の靴を履く』
  • 『僕はイエローでホワイトでちょっとブルー』


これらの本で語られているのは、共感を超えた**「想像力」としての知性**です。

ブレイディ氏は、こう語っています。

「他者の靴を履く」とは、相手と同じ立場に立つことではない。相手の世界がどう見えているかを、必死に想像し続けることだ。


患者さんと同じ土俵には立てない。同じ痛みは感じられない。

だからこそ、ひたすらに考え続ける。

それが、医療者に必要な「共感力」の本質だと、私は学んだのです。


読書で変わった「臨床の風景」と私の行動

日常の中で考えを整理している様子。読書で学んだことを臨床に活かすために記録する理学療法士の手元。


読書を通じて想像力が養われた結果、私の臨床は具体的にどう変わったのか。

以下の表に、Before/Afterをまとめました。

項目読書前(以前の私)読書後(現在の私)
患者への視点「わがままな人」「非協力的な人」「言葉にできない葛藤を抱えた人」
言葉遣い親しみやすさを狙った「タメ口」敬意を込めた徹底的な「敬語」
会話のスタイル正論で「説得」する質問で「背景を深掘り」する
リハビリの目的身体機能の改善(歩かせる)人生の再建(外に出る理由を創る)


【変化1】「親しみやすさ」をやめ、徹底した「敬語」へ

読書を通じて学んだことの一つは、**「相手の人生への敬意」**でした。

青葉
青葉

医療現場では、「親しみやすさ」を理由に、患者さんにタメ口で話す職員も少なくありません。私もかつてはそうでした。


でも、本を読み、様々な人生の重みを知るにつれて、こう思うようになりました。

「この人は、私が生まれる前から人生を歩んできた人だ」

だから、私は意識的に**「敬語」**に変えました。

青葉
青葉

敬語にしたから信頼されたわけではありません。

敬語は、「相手の人生に敬意を払う姿勢」を自分に思い出させるためのスイッチみたいなもんです。


医療現場でのタメ口は、無意識のうちに「医療者=上、患者=下」という権力勾配を作ってしまいます。

敬語を使うことは、相手を一人の独立した人格として尊重する「礼儀」であり、同時に感情的にのめり込みすぎないための**「プロとしての適切な距離感」**でもあるのです。

【変化2】自分の話を抑え、「聞き役」に徹する

人間は、自分の話をしたくなる生き物です。

だからこそ、私は自分の話を抑え、質問することに集中しました。

  • 「それはどんなお気持ちでしたか?」
  • 「ご自宅ではどんな風に過ごされていますか?」
  • 「これからやってみたいことはありますか?」


相手が「この人と話すのは楽しい」と思えるまで、ひたすら聞く。そして、その会話の中から、リハビリのヒントを見つける。

読書で学んだ「相手の世界を理解しようとする姿勢」が、自然と質問の質を変えていったのです。

【変化3】「歩かせる」から「外に出る理由を創る」へ

理学療法士の仕事は、身体機能や能力を改善し、社会復帰の手助けをすることです。

でも、読書を通じて気づいたのは、身体機能を高めるだけでは足りないということでした。

改善した機能を使って、患者さんが**「どこへ行きたいか」**を想像できなければ、そのリハビリはただの作業になってしまう。

青葉
青葉

身体機能を高めるだけでなく、心をリハビリする。

それが、読書で養った想像力が臨床に活きる瞬間でした。


【実体験】拒否が強かった患者さんが、私にだけ心を開いた話

ある患者さんは、担当のPTやOTに対してリハビリ拒否が続いていました。

数年間、社会に出る一歩を踏み出せないまま過ごし、医療や介護に強い不信感を持っていました。

ある日、私が代診でその方を担当した時のことです。

驚くことに、全く拒否なくリハビリを受けてくれたんです。

青葉
青葉

その時、私は特別なテクニックを使ったわけではありません。

ただ、ひたすらに「この人は何を感じているのだろう」と想像しながら、話を聞き続けました。


以前の私なら、「なぜ動いてくれないのか」とイライラしていたであろう場面でも、今の私は違いました。

  • 「この人が動けないのには、理由がある」
  • 「その理由を、まず知りたい」


そう思いながら、質問を重ねました。

その後、正式に担当が変わり、その方は他のサービスを調整してまで、私のリハビリの回数を増やしてくれました。

「あなたのリハビリなら受けたい」

その言葉をもらった時、読書で学んだ「想像力」が、確かに臨床を変えたのだと実感しました。


医療者こそ読むべき「共感力を磨く4冊」

医療者の共感力を高めるおすすめ本4冊。リハビリの夜、リハビリテーションの結果と責任、他者の靴を履く、青い鳥の表紙。
これらの本が、私の共感力を決定的に変えました。


ここからは、私の共感力を決定的に変えた本を紹介します。

医学書では学べない「人間力」を養いたい方に、ぜひ読んでいただきたい4冊です。

1. 『リハビリの夜』(熊谷晋一郎 著)

医師でありながら、自身もリハビリを受けた当事者の手記。

この本には、PTには言えない患者の本音が赤裸々に綴られています。

  • 「リハビリを受けていて、こんな気持ちなのか」
  • 「私たちは、こんな風に見られているのか」


読み終えた後、しばらく患者さんの顔を見るのが怖くなるほど、衝撃的でした。


2. 『リハビリの結果と責任』

患者自らの言葉が綴られた、貴重な一冊。

リハビリの「成功」や「失敗」を、当事者の視点から語った本です。

医療者側の「良かれと思って」が、患者さんにはどう映っているのか。その温度差を知ることができます。


3. 『他者の靴を履く』(ブレイディみかこ 著)

共感を超えた「想像力(エンパシー)」の本質を学ぶ一冊。

医療者に必要な「知性としての共感」が、この本には詰まっています。

「共感」とは感情ではなく、**「想像し続ける力」**だと教えてくれます。


4. 『青い鳥』(重松清 著)

心を通わせるための「寄り添い方」を、物語から学ぶ。

小説だからこそ伝わる、人間の温かさがあります。

青葉
青葉

著者自身が吃音のため悩みや苦しみがあり作品に反映されてます。

そのため言葉の重みが違う。


医学書では学べない「人間力」を、物語を通じて体感できる一冊です。


(番外編)『僕はイエローでホワイトでちょっとブルー』(ブレイディみかこ 著)

多様性の時代に必要な「他者理解」のヒント。

医療現場でも、様々なバックグラウンドを持つ患者さんと出会います。その時に必要な「想像力」を養える本です。

青葉
青葉

一時期話題になった本です。

現在は文庫版も販売されているため手に取りやすい価格です。



リハビリを勉強するだけでは、リハビリは完成しない

医学書だけでは学べない「人間力」

例えば、認知症の方への対応は、教科書的な正しさでは解決しません。

  • 「薬をちゃんと飲んでください」
  • 「リハビリをやらないと良くなりませんよ」


こんな医療者側の論理を言っても、相手の心は動かない。

まずは相手をわかってあげること。話を聞くこと。

そして何より、**「その人の人生観」**を大事にすることが重要です。

技術だけでなく、「その人がどんな人生を歩んできたのか」を想像する力。それが、医学書だけでは学べない「人間力」です。

青葉
青葉

みんな、医療者も介護者も、それをわかってはいます。

でも、時間に追われると対応できなくなる。


だからこそ、日頃から読書で「想像する筋肉」を鍛えておく必要があるのです。

医療という仕事は、正しさだけでは前に進まない

医療は、正しさだけでは前に進まない仕事です。

  • 技術は大切です。
  • 知識も必要です。


でも、人の人生に触れる以上、答えが出ない問いを抱え続ける覚悟が必要になる。

  • 「この人は、なぜこんなにも苦しんでいるのか」
  • 「私は、この人の人生にどう関われるのか」


そうした問いに、医学書は答えてくれません。

だからこそ、読書が必要なのです。

後輩へのメッセージ──若い頃の自分に伝えたいこと

無理をせず読書を生活に取り入れている様子。リラックスした時間に本を読む理学療法士のイメージ。
共感力を鍛える読書は、努力じゃなく習慣。


もし、医学書ばかり読んでいる後輩がいたら、私はこう伝えたい。


「リハビリの知識だけ勉強しても、使えない時が多いよ。

人を相手にする仕事だから、患者さんが書いた手記とか、小説を読んでみて。

少しずつ、心を通わせられるようになる。

患者さんとある程度心を通わせて、はじめてリハビリができる。

そのためには、本でいろんな人の経験を追体験しなさい。」


共感力は、言うほど簡単じゃない。むしろ、共感なんてできやしない。

でも、ひたすらに想像することはできる。

そして想像力を養うために、読書がある。

青葉
青葉

読書する前とした後では、共感力の深度が全く違う。少なくても私はそうでした。


だから、本を読みなさい。


まとめ:一冊の本が、あなたの「患者を見る目」を変える

一日を振り返りながら考え事をする時間。読書で得た学びを噛み締める理学療法士の後ろ姿。


共感力とは、相手になりきることではありません。

相手の人生を想像し続ける力であり、読書はその想像力を鍛える、最も安全で深い訓練です。

一冊の本が、あなたの「患者を見る目」を劇的に変えます。

もし迷ったら、**『リハビリの夜』**から読んでみてください。

きっと、明日の患者さんの見え方が少し変わります。


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※免責事項

本記事は、筆者個人の臨床経験に基づく考え方を共有するものであり、特定の治療法や効果を保証するものではありません。

患者さんへの対応方法は、個々の状況や専門的判断によって異なります。あくまで一つの視点として参考にしていただければ幸いです。

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